モバイルバッテリーの事故報告件数
51件 → 192件
2021年 → 2025年、約3.8倍
① 検査が第三者へ
自己確認から登録機関の検査へ
② マークの形が変わる
丸PSE → ひし形PSE
③ 手持ちは使える
施行は2027年3月目標+経過措置1年
2026年8月31日、経産省の審議会で示された方針案
まず、決まったことと決まっていないことを分ける。
示されたこと
産業構造審議会・製品安全小委員会で、電気用品安全法の見直し方針案が示された
まだのこと
政省令の公布は2027年2月までに予定。条文が確定するのはこれから
報じられているのは方針案の段階だ。細部が動く可能性は残っている。ただ、向かう方向——事業者の自己確認だけでは足りない、第三者の検査を挟む——という骨格は、はっきり示されている。
丸PSEとひし形PSE——形が違うと、何が違うのか
この2つは、デザイン違いではなく手続き違いだ。
電気用品安全法では、リスクが高いとされる品目にひし形、それ以外に丸のPSEマークが付く。モバイルバッテリーはこれまで丸のほう、つまり事業者が自分で「基準に合っています」と確認して表示する区分だった。
見直し後は、国の登録を受けた第三者機関による検査を通さないとマークを付けられなくなる。検査する人が、作った本人から外部へ移る——変わるのはそこだ。
事故報告は2021年の51件から2025年の192件へ
動いた理由は、数字のほうに出ている。
事故報告件数は2021年に51件、2025年に192件。4年で約3.8倍になった。公共交通機関の車内での発火も起きている。
製品評価技術基盤機構(NITE)の集計では、2021〜2025年の5年間にリチウムイオン電池を積んだ製品の事故が2,140件報告されており、製品別で最も多いのがモバイルバッテリーだとされている。件数は8月にピークを迎える季節性もある。
2019年にもう規制されている——それでも増えた
ここが、この件でいちばん引っかかったところだ。
モバイルバッテリーは2019年2月1日から電気用品安全法の規制対象になっている。マークが無い製品は流通できない。つまり、ノーガードだったわけではない。
事実:規制対象化から6年を経た2025年に、事故報告は2021年比で約3.8倍になっている。
考察:問われているのは規制の有無ではなく、自己確認という形式のほうだと読める。
「4倍」を鵜呑みにしないための分母の話
データを扱う人間として、ここは書いておきたい。
件数が増える理由(候補)
- ・出回っている台数そのものが増えた
- ・事故として報告される割合が上がった
- ・製品1台あたりの危なさが上がった
件数だけでは分けられない
公表されているのは件数であって、保有台数あたりの発生率ではない。3つのどれがどれだけ効いたかは、この数字だけでは切り分けられない
ワテの本業で「前年比4倍です」という報告が上がってきたら、まず分母を聞く。台数が4倍になっていれば、率は横ばいだ。51件と192件だけでは、率が悪化したのかどうかは言い切れない。
それでも規制側が動いたのは、件数の伸びに加えて原因の内訳を掴んでいるからだと読める。次で見るように、原因が製品の作り方の側に寄っているなら、量の問題ではなく構造の問題になる。
原因は「使い方」ではなく「作り方」の側に寄っている
ここが、今回の対策が検査へ向かった理由だ。
NITEなどの分析によると、多くは製品そのものに理由があるとされている。3つとも、買った人が店頭で見分けたり、丁寧に扱ったりして避けられる種類のものではない。
技術基準そのものも見直される
検査を増やすだけではなく、合格ラインの中身も変わる。
| 変わるところ | 内容 |
|---|---|
| 適合性検査 | 登録を受けた第三者機関による検査が必要に |
| 工場検査 | 製品だけでなく、作っている現場も検査の対象に |
| 異物混入防止 | 製造工程での混入防止が義務づけの方向 |
| 品質管理措置 | 充放電制御・セルの安全性を含めた管理を強化 |
出来上がった1台を試験するだけでは、たまたま良い1台を見ているだけになりかねない。工場の側を見に行く設計が入っているのは、原因が製造ばらつきに寄っているという分析と噛み合っている。
いつから変わるのか——スケジュールを1本で
明日から店頭が変わる、という話ではない。
政省令の公布は2027年2月まで、施行は2027年3月を目指すとされている。さらに1年間の経過措置が置かれる予定だ。今日買ったものが来月使えなくなる、という種類の変更ではない。
いま持っているモバイルバッテリーはどうなるのか
不安になる論点なので、はっきり書いておく。
現時点で示されていること
- ・手持ちの製品がすぐ使えなくなる話ではない
- ・見直しはこれから出荷される製品に向いている
- ・施行後も1年の経過措置が置かれる予定
それとは別に見ておきたいこと
- ・PSEマークがそもそも付いているか
- ・膨らみ・発熱・異臭など状態の変化
- ・リコール対象になっていないか
制度が変わるのは1年半ほど先だが、手元の1台の状態はそれとは無関係に今の話だ。膨らんできたものを使い続ける理由は、制度が何であれ無い。引き出しの奥に入れっぱなしの1台を出してくるくらいなら、今日でもできる。
影響度チェック:あなたに効く度合い
当てはまる数が多いほど、2027年の話が自分ごとになる。
買うときに見る場所は、マークの有無から、当面のあいだ形へ移っていく。2027年以降、ひし形が付いた製品は第三者検査を通っている——という読み方ができるようになる。
まとめ:カバンを開ける前の3つの問い
事故は2021年の51件から2025年の192件へ。原因は使い方ではなく作り方の側に寄っており、対策は自己確認から第三者検査へ動いた。丸からひし形へ、という形の変化は、検査する人が変わったことの目印だ。施行の目標は2027年3月、経過措置は1年。慌てて買い替える話ではないが、引き出しの1台を確認するのは今日でもできる。
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やま(筋肉データアナリスト)
データ分析実務18年/第二種電気工事士・危険物取扱者乙種第4類・G検定・FP2級 ほか15資格
本業は事業会社のデータ分析。この記事では商品の良し悪しを判定するのではなく、「事故が4倍」という件数を分母つきで読むことと、対策が検査へ向かった理由が原因の内訳と噛み合っているかに絞って書いた。モバイルバッテリーの販売・紹介は行っておらず、読者がどの製品を選んでも筆者に利益は発生しない。
出典・免責
① ケータイ Watch「経産省、モバイルバッテリーの安全検査義務化へ 事故4倍受け」(2026年8月31日)k-tai.watch.impress.co.jp(産業構造審議会 製品安全小委員会での方針案/事故 2021年51件・2025年192件/丸PSEから ひし形PSEへ/2027年2月までに政省令公布・2027年3月施行目標・経過措置1年/異物混入防止・品質管理措置・工場検査)
② 日本経済新聞「モバイルバッテリー、第三者機関の検査義務づけ 経産省が発火対策」(2026年8月31日)nikkei.com(第三者機関による適合性検査の義務づけ方針)
③ 製品評価技術基盤機構(NITE)「『夏バテ(夏のバッテリー)』にご注意を」(2026年7月15日)nite.go.jp(2021〜2025年の5年間でリチウムイオン電池搭載製品の事故2,140件/製品別ではモバイルバッテリーが最多/8月にピーク/3つのC)
④ 経済産業省「モバイルバッテリーに関するFAQ/電気用品安全法」meti.go.jp(モバイルバッテリーの規制対象化とPSE表示の区分)
⑤ 国民生活センター「モバイルバッテリーにPSEマークがついていなかった」kokusen.go.jp(2019年2月1日からの規制対象化・丸型PSE=特定電気用品以外の区分)
いずれも取得日 2026年9月2日。事故件数のグラフのうち中間年(2022〜2024年)は公表値ではなく、増加の向きを示すための模式表現です。「約3.8倍」は51件と192件から算出した本記事による計算値です。
本記事は2026年8月31日時点で示された方針案と公表資料をもとにした一般的な情報であり、確定した制度内容を示すものではありません。政省令の内容・施行日・経過措置は今後変更される可能性があります。製品の安全性や個別の取扱いについては、メーカーの取扱説明書・リコール情報、および経済産業省やNITEの最新の公表内容をご確認のうえ、読者ご自身の責任でご判断ください。発熱・膨張・異臭など異常がある場合は使用を中止し、販売事業者や自治体の案内に従ってください。

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