おにぎり1個の米原価が、米価ピーク時から下がった分(試算)
約4円
値下げ幅は 10円〜19円
① 米価は2つある
店頭▲16.1%/業者間+4%
② 在庫は過去最大
6月末 243万トン
③ 消費は7年ぶり低水準
1人月4,435g(▲6.1%)
9月、コンビニ3社が相次いでおにぎりを値下げする
まず、いつ・どこが・いくら下げるのかを並べる。
| チェーン | 実施日 | 対象 | 価格の動き |
|---|---|---|---|
| セブン-イレブン | 9月8日 | 手巻おにぎり2品 | 19円下げて213円 |
| ファミリーマート | 9月22日 | 直巻おにぎり4品 | 198円→187円など11円下げ |
| ローソン | 9月29日 | 手巻おにぎり全品(約20品) | 181円→171円など10円下げ |
3社とも理由として挙げているのは米の市場価格の低下。ローソンは一部商品を11円下げ、ファミリーマートは9月29日から158円の新商品も投入する。
同じ理由なのに、下げ幅は10円と19円で開いている
率に直すと、開き方がはっきりする。
同じ「米価が下がったので」という説明でも、率で見るとセブンが約8.2%、他2社が5.5%前後と1.5倍近い差がつく。原料の値動きが3社共通なら、下げ幅が揃わないのはおかしい。ここが引っかかった。
事実:3社は同じ理由を挙げているが、値下げ率には1.5倍近い開きがある。
考察:値下げ幅は原料の下落分をそのまま流したものではなく、各社の判断が乗っていると読める。
「米の市場価格」は1つではない——2つの価格が逆を向いている
ここが、この記事のいちばん大事なところ。
スーパーの棚に並ぶ精米5kgは3,191円で、前年同期より16.1%(613円)安い。ニュースで「米が安くなった」と言われているのは、たいていこちらの数字だ。
いっぽう、業者と業者のあいだで決まる相対取引価格は、令和8年7月の全銘柄平均で玄米60kgあたり32,486円。前年同月比は104%、つまりまだ前年より4%高い。ピークだった令和7年10月の37,058円からは4,572円下がっているが、前年水準までは戻っていない。
コンビニが買っているのは、下がりきっていない方の価格
卸の側にいた人間として、ここは体感がある。
おにぎりの原料になるのは、袋詰めの家庭用米ではなく業務用のルートを通った米だ。契約は数量と期間をまとめて結ぶので、市況が下がってもすぐには仕入れ値に反映されない。スーパーの棚より、コンビニの原価のほうが遅れて動く。
おにぎり1個の米原価を、実際に計算してみる
数字が出せるものは、出してから話したい。
試算の前提(本記事による設定)
- ・手巻おにぎり1個のごはん … 約100g
- ・炊飯による重量増 … 約2.2倍(=精米45g)
- ・玄米から精米への歩留まり … 約90%
玄米60kgが32,486円なら1kgは541円、歩留まり90%で精米1kgは約602円。おにぎり1個ぶんの45gなら約27円になる。ピーク時の37,058円で同じ計算をすると約31円。
つまり、米価がピークから下がったことで浮いたのは、おにぎり1個あたり約4円だ。前年同月と比べるなら、相対取引価格はまだ104%なので、原価は逆に1円ほど高い計算になる。
10円〜19円の値下げのうち、米で説明できるのは一部
並べてしまうと、話が単純になる。
値下げ幅から試算した原価減を引くと、セブンで約15円、ローソンで約6円の「説明されていない部分」が残る。米価の下落を、そのまま価格に流しただけではないということになる。
もちろん、海苔・具材・包装・物流・人件費も原価には乗る。ただしそれらが同時に下がったという話は出ていない。差額のぶんは、利益を削って値段を下げていると読むのが自然だ。
民間在庫は243万トン、過去最大になっている
値下げの理由は、原価ではなく在庫の側にもある。
2026年6月末の民間在庫は243万トンで、適正とされる180〜200万トンを大きく超えた。過去最大の水準だと報じられている。
在庫が積み上がると、相場は下を向く。相対取引価格がピークから4,572円下がったのは、この在庫が背中を押している。値下げは原価が下がったから起きたというより、原価が下がる方向が見えたから打てたと考えるほうが、流通の順番としては自然だ。
消費は7年ぶりの低水準——1人あたり月4,435g
在庫が余っている理由は、供給側だけではない。
2025年度・1人1か月あたりの精米消費量
4,435g
前年度比 ▲6.1%/7年ぶりの低水準
数量が減ると何が起きるか
値上げが続いた期間に、買う量そのものが落ちた。単価を上げても数量が落ちれば売上は伸びない。値下げは、その数量を取り戻しにいく手になる
高くなった分だけ買う量を減らす——価格に対する反応が、この2年ではっきり出た形だ。値上げで守った利幅を、数量の減少が食っていたとすれば、原価が緩んだタイミングで値下げに転じるのは合理的な判断になる。
元食品卸から見ると、これは「客数を取りに行く値下げ」
ここは事実ではなく、ワテの読みとして書く。
値下げ幅が揃わなかったのも、これで説明がつく。原価から逆算した値段ではなく、棚に並んだときの見え方から決めた値段だとすれば、元の価格が高いチェーンほど下げ幅を大きく取る必要がある。セブンの19円が飛び抜けているのは、そういうことだとワテは読んでいる。
影響度チェック:家計にはいくら効くのか
10円という数字を、生活の頻度に掛けてみる。
| 買う頻度 | 1か月の効果(10円下げ) | 1年では |
|---|---|---|
| 週1個 | 約40円 | 約520円 |
| 平日毎日1個 | 約220円 | 約2,600円 |
| 平日毎日2個 | 約440円 | 約5,200円 |
平日毎日1個なら年2,600円ほど。劇的ではないが、値上げが続いた2年で削られた分の一部が戻ってくるという規模感になる。19円下げの商品を選べば、この1.9倍だ。
影響が大きいのは、昼食をコンビニに寄せている層と、家族ぶんをまとめ買いしている層。逆に、家で炊く米に切り替えた人には、スーパーの精米が前年比16.1%安いほうが効いてくる。
まとめ:レジ前で考える3つの問い
コンビニ3社が9月に相次いでおにぎりを値下げする。理由はどこも米の市場価格の低下だが、コンビニが買う業者間価格は前年同月比104%でまだ高い。ピークからの下落を1個あたりに割ると約4円で、10〜19円という下げ幅には届かない。米価が下がったから下げたというより、在庫と消費の落ち込みを前に、数量を取り戻しにいく値下げ——ワテにはそう見えている。
米と値上げでつながる関連記事
やま(筋肉データアナリスト)
食品業界11年(食品メーカー営業7.5年 → 菓子卸3.5年)/データ分析実務18年/FP2級・G検定 ほか15資格
値段の付け方を、売る側から見てきた立場。この記事では商品を勧めるのではなく、「米価が下がったので値下げします」という説明を原価に割り戻したら何円になるかを確かめることに絞った。コンビニ各社・米穀事業者との利害関係はなく、読者がどの店で買っても筆者に利益は発生しない。
出典・免責
① 流通ニュース「ファミマ/おにぎり4種類を11円値下げ、米の価格低下でコンビニ3社が相次ぎ値下げ」ryutsuu.biz(ファミリーマート9月22日・直巻4品を11円値下げ/9月29日に158円の新商品/セブン-イレブン9月8日・手巻2品を19円値下げして213円/ローソン9月29日・手巻全品10円値下げ)
② 食品産業新聞社ニュースWEB「ローソン、手巻おにぎり全品10円値下げ 9月29日から」(2026年8月24日)news.yahoo.co.jp(シーチキンマヨネーズ181円→171円/熟成紀州南高梅・北海道産日高昆布 194円→184円/一部11円値下げ/米の市場価格低下が理由)
③ 農林水産省「米の相対取引価格・数量、民間在庫の推移等」maff.go.jp(令和8年7月 全銘柄平均 玄米60kg 32,486円・前年同月比104%/ピークは令和7年10月 37,058円/2026年6月末の民間在庫243万トン)
④ プラスチックパレット株式会社「コンビニおにぎりはいくら安くなるのか」plastic-pallet.co.jp(スーパー店頭の精米5kg 3,191円・前年同期比16.1%安/相対取引価格の推移の整理)
⑤ 日本農業新聞「米消費7年ぶり低水準 25年度6%減」agrinews.co.jp(2025年度の1人1か月あたり精米消費量4,435g・前年度比6.1%減)
いずれも取得日 2026年9月2日。おにぎり1個あたりの米原価(約27円・約31円・差約4円)と値下げ率(約8.2%・約5.6%・約5.5%)、家計への影響額は、記載の前提にもとづく本記事による試算値であり、各社が公表した原価や利益構成ではありません。ごはんの量・炊飯倍率・歩留まりは商品や製法で異なります。適正在庫水準180〜200万トンは報道による目安です。
本記事は公表資料と報道をもとにした一般的な情報であり、特定の店舗・商品の購入を勧めるものではありません。価格・実施日は変更される場合があるため、購入前に各社の公式発表をご確認ください。値下げの背景に関する解釈部分は筆者の見解であり、各社の説明ではありません。読者ご自身の判断でご活用ください。

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